腰痛の生涯有病 83.5%

腰を痛めた女性

独立行政法人労働者健康福祉機構が2013年に実施した「職場における腰痛の発症要因の解明に係る研究・開発、普及」研究報告書によると、腰痛の生涯有病率は 83.5%で男性 82.4%、女性 84.5%でした。

これによると実に働く人の8割以上が腰痛を経験していることになります。

そこで今回は腰痛を改善するリハビリを目的としたトレーニングについてご紹介します。
現在、腰痛でない方もこの記事を読んでいただくと予防法がわかりますので、ぜひご覧ください。

目次

腰痛の重症度

腰部障害の進行ステージ

筋肉や関節などに障害が起こると進行度に応じて症状が変化していきます(表1)。

ステージ12345
症状違和感運動時の痛み運動後の痛み日常生活動作の障害関節可動域の制限、神経障害
組織変化微細損傷炎症骨増殖・吸収、軟骨変性変形
レントゲン所見での分類機能的障害機能的障害機能的障害器質的障害器質的障害
表1. 障害のステージ分類

ステージ1

不適切な身体の使い方をしたときに骨・軟骨・じん帯・筋肉・腱・神経などの組織に負荷が加わると、動作時に違和感の症状がでます。

ステージ2

組織への負荷が継続的に加わると微細な損傷が生じ、身体を動かしたときに痛みを伴うようになります。

ステージ3

さらに負荷が加わり続けると血液に含まれる白血球から炎症反応を促進する働きを持つサイトカインが放出されます。
患部が腫れたり、熱を持ったりして炎症が生じ、動作を終えた後にも痛みが続くようになります。

炎症について詳しく知りたい方は「プロがおすすめ!けが・痛みを予防する効果的なトレーニングのやり方」の記事をご一読ください。

ステージ4

炎症が起こっている組織に線維芽細胞(せんいがさいぼう)が集まり、コラーゲンを産生して損傷した部位を修復します。

この時期に炎症を起こしている組織に負荷が加わり続けると、炎症は継続して正常な修復が妨げられます。
線維芽細胞はコラーゲンを作り続け、神経が組織にとどまるため痛みが発生します。

このような不適切な状態では骨の増殖や吸収が生じたり、背骨と背骨の間にある椎間板が変性し組織の変形が起こります。

ステージ5

さらに軟骨の変性や骨が増殖するなどの変形性変化が進行すると、変形性脊椎症へ進展します。

増殖した背骨の関節に骨のとげや肥厚した背骨のじん帯などによって、背骨の後ろにある脊髄神経が通るスペースが狭くなり神経が圧迫されるようになります。

そして脚の痛みや痺れがでる脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)に至ります。

腰部の機能的障害と器質的障害

ステージ1~3はレントゲンで所見が現れない段階で機能的な障害に分類されます。
一方ステージ4~5はレントゲンで所見が認められる段階で器質的な障害に分類されます。

腰痛の重症度が軽いステージ1~3の段階で微細損傷や炎症の原因となった背骨への負荷を減らすことが、重症度の高いステージ4または5への移行を阻止することにつながります。

機能的障害

腰部の機能低下によって生じている可逆的な変化(元の状態に戻すことができる)による腰痛の状態を指します。

この場合、原因である機能低下を改善させることが必要になります。

器質的変化

レントゲン検査によって異常所見(骨に異常が認められるもの)があるものを差します。

この場合、障害の程度によっては手術が検討されます。

腰椎の安定性

頭蓋骨・背骨・骨盤の模型

腰の背骨を腰椎(ようつい)と呼びます。

腰椎の機能は次のの3つがあります。
①身体を支える
②身体を動かす
③神経組織の保護

腰椎が不安定な状態だとこれらの機能が損なわれ腰痛や動きの制限、脚がしびれるなどの症状がでます。

エラスティックゾーンとニュートラルゾーン

腰椎のエラスティックゾーンとニュートラルゾーン
図2. 関節可動域における領域

腰を反ったり丸めたりして腰椎を動かすと可動域の終末に近づくにつれて筋肉やじん帯などが突っ張ります。
それ以上動かすには力が必要でこの領域をエラスティックゾーンと呼んでいます(図2)。
この領域で腰椎を繰り返し動かすと関節に負荷が加わり微細損傷が生じるため障害が発生しやすくなります。

一方、可動域の中間で力を加えなくても自由に動く領域をニュートラルゾーンと呼んでいます(図2)。
この領域を保持するためには筋肉の活動による安定性が求められます。

したがって腰を動かす場合は、筋肉を活動させて腰椎がニュートラルゾーン内に留めるようにすることが大切になります。

腰痛の種類

機能的な腰部の障害

ステージ1~3に該当する腰痛の種類をご紹介します。

椎間板性腰痛

椎間板ヘルニアの骨の模型

椎間板は背骨と背骨の間にありクッションの役割を持っています。

椎間板は年齢とともに水分量が減少し20代で3割に70代で9割に変性が認めらます。
しかし20代でも3割に変性が認められることから遺伝的な要因も強いと考えれています。

また後天的な要因としてスポーツ活動や肥満などの物理的な負荷も影響を及ぼすことが報告されています。

正常な椎間板には神経や血管が存在しないため、負荷が加わっても痛みは感じません。
しかし椎間板の水分量が減少するとクッション機能が低下し、大きな負荷が加わることで微細損傷が生じます。

負荷が繰り返されて炎症が生じると神経組織が侵入し、椎間板の圧力が変化したときに痛みが出るようになります。

痛みが生じるのは組織を修復するために必要な反応で、損傷部位に負荷を加えないように警告するアラートの役割を持ちます。

もし損傷部位への負荷がなくなり、炎症が消失すると神経組織も無くなるため治癒に至ります。しかし椎間板への負荷が継続すると炎症は持続し神経組織はとどまり続けるため痛みを発し続けることになります。

原因の一つとして身体を前屈したときに腰椎の土台となる骨盤が一緒に前に動かないことが挙げられます。

改善策としては骨盤を動きやすくするために筋肉の柔軟性を高めるとともに胸椎(胸の背骨)や胸郭(あばら)を動きやすくすることで腰椎の負担を減らしていきます。

椎間関節性腰痛

腰痛の骨の模型

椎間関節は腰椎と腰椎をつなぐ関節です。

腰を動かしたときに椎間関節のエラスティックゾーン(危険領域)での動きが繰り返されると微細損傷→炎症→変性へと進行します。
この過程において腰痛を発症します。

その特徴は腰を反ったり、ひねったりする動きによって痛みが出ることです。
特にスキーや野球のピッチャーなどスポーツをする方に多くみられます。

原因の一つとして腰を反ったり、ひねったりするときに身体全体で動かすことができずに腰に負担が集中してしまうことが挙げられます。

改善策としては骨盤をはじめ胸椎や胸郭(あばら)など腰以外の部位の柔軟性を高めて、身体全体で動かせるようにすることで負担を分散することです。

仙腸関節性腰痛

仙腸関節(せんちょうかんせつ)は骨盤の中央にある仙骨(せんこつ)と両サイドにある腸骨(ちょうこつ)が結合する関節です。

仙腸関節は強固なじん帯と筋肉によって安定されていますが、大きな負荷が加わったときに筋肉の活動が低下しているとじん帯が過度に引き伸ばされて痛みを発生するようになります。

大きな負荷が生じる状況として、しゃがみ込みや座っているときなど骨盤が固定された状態での前にかがむ動作や立って身体を反らす動作のときなどがあります。

痛みのパターンとしては身体を丸めたときに痛みが出るものを「ニューテーション型」、逆に反ったときに痛みが出るものを「カウンターニューテーション型」、丸まっても反っても痛みが発生するものを「不安定型」と呼んでいます。

改善策としては仙腸関節を安定するための体幹の筋肉を活性化と、仙腸関節の負荷を減らすための骨盤についている筋肉の柔軟性向上、適切なタイミングで筋肉が活動できるようにしていきます。

筋性腰痛

筋肉や筋肉を包んでいる筋膜が関与する腰痛を総称して筋性腰痛と呼びます。

筋筋膜性疼痛

筋膜に何らかの原因で微細損傷が生じて炎症すると筋膜の周囲に線維化が起こり筋肉の滑りが悪くなります。

線維化とは組織中の結合組織(結合作用を営む組織)が異常増殖することをいいます。
線維化すると柔らかかった組織が硬くなる硬結(こうけつ)ができて痛みが発生します。

改善策としては腰への負荷を軽減させる身体の機能を適切にすることが必要になります。

筋付着部障害

背骨を支える脊柱起立筋(背骨の両サイドにある筋肉)は運動や姿勢を保つために必要な筋肉です。

脊柱起立筋が遠心性収縮(引き伸ばされながら筋肉を縮めるような収縮)を繰り返すことで筋肉がついている骨の付着部付近で障害が発生します。
よく起こる場所としては骨盤のすぐ上に痛みが生じます。

脊柱起立筋に過度な負荷が加わるアスリートや背骨が丸まっている高齢者などは姿勢を保つために脊柱起立筋の活動が高まるため付着部障害がよく起こります。

また体幹の安定性が不十分な方や殿筋(お尻の筋肉)がうまく使えていない方なども脊柱起立筋に負荷が増すため同障害のリスクが高まります。

改善法としては身体を動かすときに脊柱起立筋の負担が減るような身体の使い方を覚えて、それを日常生活で実践していくことが有効になります。

体幹筋肉ばなれ障害

体幹の筋肉に遠心性収縮(引き伸ばされながら筋肉を縮めるような収縮)が生じ、筋肉や筋膜が引き離されるような大きな力が加わると筋肉と筋膜の境界部に肉ばなれが起こります。

一般の方にはあまり起こらない障害ですが、野球・やり投げ・カヌー・ハンドボールなどの体幹を素早く回旋させるアスリートに体幹の筋肉の一つ内腹斜筋に肉ばなれが発生することがあります。

体幹筋付着部の裂離骨折(れつりこっせつ)

筋肉と筋膜に大きなけん引力が加わると、付着部に裂離骨折が発生することがあります。

裂離骨折とは骨の一部が引きはがされて生じる骨折をいいます。

まれな障害ですが交通事故などで腹圧が急激に高まり、お腹の周りを取り囲む胸腰筋膜の強いけん引力によって腰椎の横突起に裂離骨折を起こすことがあります。

棘突起インピンジメント障害

角同士で衝突するヤギとヤギ

アスリートが身体を反らす動作を行うときに背骨・あばら・骨盤の可動性が低いと腰椎の棘突起(きょくとっき:背骨の真後ろにある突起)同士が衝突するインピンジメントが起こります。

インピンジメントによって棘突起の間にある滑液包(かんせつほう:ねばりけのある滑液を含んだ袋で筋肉や腱などの摩擦を軽減する作用がある)に炎症が生じて身体を反ったときに腰に痛みが発生します。

この障害では腰を真後ろに沿ったときに棘突起と棘突起の間に痛みが発生します。

改善策としては 胸椎・胸郭(あばら)・骨盤の可動性 を高めて、身体を沿ったときに全体を動かせるよにすることで腰の負担を減らしていきます。

器質的な腰部の障害

ステージ4~5に該当する腰痛の種類をご紹介します。

腰椎分離症(椎弓疲労骨折)

腰椎にストレスが加わり続けると骨が形成される能力が低下することで骨が弱くなり疲労骨折を起こします。
疲労骨折は同じ場所に小さな力が加わり続けることで起こる骨折になります。

特に骨が未成熟な成長期での発生が多く、スポーツなどで腰椎を反ったり回旋する負荷が繰り返し行われると腰椎に疲労骨折が生じます。

疲労骨折の場所としては腰椎の椎弓(ついきゅう:背骨の両側から後方に出ている橋状の部分)で、亀裂が大きく完全に背骨と椎弓が引き離されてしまうと腰椎分離症となります。

亀裂が小さい場合は骨折部位の負荷をなくすことで骨癒合(こつゆごう:骨がくっつく)することがありますので、医師の判断のもと治療を行っていきます。

また痛みに関しては疲労骨折が進行しているときは腰痛が生じますが、末期になると腰痛を伴わないことが多いです。

改善策としては椎間関節性腰痛と同様に骨盤をはじめ胸椎や胸郭(あばら)など腰以外の部位の柔軟性を高めて、身体全体で動かせるようにすることで負担を分散することが必要になります。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアのMRI画像

腰椎と腰椎の間にありクッションの役割を持つ椎間板が変性し、椎間板の中にある髄核(ずいかく)が後方に移動した状態が腰椎椎間板ヘルニアになります。

腰椎の後方には脊柱管(せきちゅうかん:背骨が連なってできたトンネル状の菅で脊髄神経が収まっている)があり、髄核が脊柱管内まで移動すると神経が圧迫されて炎症を起こします。

腰椎椎間板ヘルニアの症状としては、神経に沿って痛みがでたり力が入りにくくなったりします。

腰椎4番と5番の間や腰椎5番と仙骨の間のヘルニアでは太ももの後ろの痛みや足の筋力低下、しびれなどが生じます。

一方腰椎3番と4番の間のヘルニアでは太ももの前の痛みや太ももの筋力低下、しびれなどが生じます。

まれに巨大なヘルニアで神経が強く圧迫されて膀胱直腸障害が起こる場合などでは緊急手術が必要になることもあります。

腰椎椎間板ヘルニアは後方に移動した髄核が吸収されて消失することもありますが、腰が丸まるような動きによって神経症状や脚の痛みが再発し手術が必要になる可能性があるため必ず専門医に相談するようにしていください。

変形性脊椎症

背骨が変性するときに骨が増殖する変化が起こり、増殖部の周囲に血管や神経が侵入してきます。

変形性脊椎症では、日常動作によって変形した背骨に負荷が加わると痛みを生じます。

変形性脊椎症の痛みの特徴としては、動作の開始時に痛みが発生し動いているうちに痛みが軽減していきます。
しかし変形が進行して軟骨(なんこつ:骨の端を覆っている弾力性のある骨)が消失すると荷重時には常に痛みがでるようになります。

また骨が増殖した結果できる骨棘(こつきょく:骨が増殖してできるトゲのような形状をした骨)によって関節の動きが物理的に制限される末期においては、骨の増殖反応が低下し侵入した血管・神経も消えていくため痛みがでなくなります。

変形性脊椎症は様々な病態があるため医師の診断をもとに病態に応じた適切な運動をしていくことが重要になります。

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は増殖した骨棘や椎間板の膨らみ、背骨の関節の肥大、脊柱管内にある黄色じん帯の肥厚によって脊柱管や神経孔(しんけいこう:脊柱管から抹消神経がでるときの空間)が狭くなることをいいます。

それられによって神経が圧迫されて坐骨神経痛(ざこつしんけいつう:太ももの後ろにある坐骨神経に沿って痛みがでる)、間欠性跛行(かんせつせいはこう)や脚に麻痺が生じます。

脊柱管の狭窄の原因の一つである黄色じん帯は腰を反ると前方にたくれ込み(しわがよる)脊柱管がより狭くなります。逆に腰を丸めると黄色じん帯が上下にけん引されてたくれ込みが解消されるため脊柱管狭窄が軽減します。

脊柱管狭窄症の症状である間欠性跛は、歩行によって脚にしびれや痛みが発生するため歩行が継続できなくなります。

その際に座って腰を丸める姿勢やしゃがみ込みをして休息すると歩行が再開できるようになります。
腰を丸めることで脊柱管狭窄が緩み神経症状が一時的に改善することでこのような現象が起こると考えられています。

脊柱管狭窄症に対しての運動としては、腰を反らないような姿勢がとれるように腹筋を使いやすくするためのトレーニングや背筋の柔軟性を高めるためのストレッチングを行っていきます。

脚の筋力低下や膀胱直腸障害がみられるようなときは手術が必要になることがあるため専門医に相談してください。

腰痛のためのトレーニング

腰痛のトレーニングでは、病態を考慮し適切なエクササイズを選択することが求められます。

すべての病態に必要なトレーニング(体幹深部筋群の機能改善)

腰椎の負担を減らすためには体幹の筋肉を活動させて腰椎がニュートラルゾーン内に留めるようにすることが大切になります。

体幹の筋肉である腹横筋と多裂筋を機能させるトレーニングをご紹介します。

腹横筋の活性化エクササイズ

腹部引き込み運動

腹横筋はあばら・背骨・骨盤に付着する腹巻き上の筋肉です。

運動のやり方は仰向けで膝を立てて90°程度に曲げた状態で、息を吐きながらお腹を凹ませていきます。

腹横筋は体幹の深層にある筋肉で、浅層にある腹直筋や外腹斜筋の活動が高まると腹横筋の活動がしくくなります。強い力でお腹を凹ませると腹直筋や外腹斜筋が活動してしますので、このエクササイズでは軽い力で行うことが大切です。

また腹横筋と骨盤の下にある筋肉は同時に収縮するため、肛門を閉めたり、排尿を我慢するようにしながら行うと効果的です。

それ以外にも腹横筋を収縮すると骨盤が若干丸まるため、骨盤をやや丸めながら行うとうまくできるようになります。

多裂筋の活性化エクササイズ

四つん這いで腕足を挙上する運動

多裂筋は腰椎に直接付着している筋肉で個々の腰椎同士を安定させる役割があります。

運動のやり方は四つん這いになり、片方の腕をバンザイするように上げていきます。
これにより腕を上げた側の腹横筋の活動が高まります。

次に腕を上げた側の反対側の足を伸ばしながら上げていきます(写真1)。
これにより足を上げた側の多裂筋の活動が高まります。

公園で四つん這いから腕を足を上げてバランスをとる女性
写真1. バードドッグ

運動のポイントとしては首から腰を真っすぐに保ちながら両肩と骨盤の位置が変わらないように行います。

各病態に対するトレーニング

腰痛のトレーニングでは次の項目を行う必要があります。

①姿勢の改善(骨の配列を適切な状態にする)
②可動性の改善
③安定性の改善
モーターコントロールの改善
(様々な機構を調整する能力)

以下、各病態における①~④の項目についてご紹介します。

椎間板性腰痛のトレーニング

姿勢の改善

椎間板性腰痛は腰が丸まった状態で荷重されることで発生するため、骨盤と腰椎を適切な位置にすることが必要になります。

運動のやり方は座った状態で骨盤を後ろに倒すようにして腰を丸めます。次に骨盤を前に傾けるようにして腰を真っすぐにして姿勢を保持します。

この運動のポイントとしては、背筋を過剰に収縮させてしまうと疲労により姿勢を保持することが難しくなるため、股関節を曲げる腸腰筋(ちょうようきん)などの筋肉を使用しながら骨盤を前に傾けるようにします。

イメージとしては太ももの付け根(鼠径部)を折り曲げるようにすると股関節を曲げる筋肉が働きやすくなります。

可動性の改善
ハムストリングのストレッチング

ハムストリングスは太ももの後ろにある筋肉です。

ハムストリングスが固くなると骨盤が後ろに傾きやすくなるため、ストレッチングをして柔軟性を高めることが大切です。

ストレッチングのやり方は、前項で紹介した座った状態での適切な姿勢を保ちながら片方の膝を伸ばしていきます。
膝を伸ばすと太ももの前側の大腿四頭筋が働くことで、神経の作用でハムストリングが伸びやすくなる効果があります。

四つん這いからの背骨を反らす運動

腰が丸まらないように腰椎を含む背骨を反るための可動性を改善していきます。

運動のやり方は四つん這いの状態から両手を前に伸ばします。
次に胸を床に着けるようにしながら背中を反っていきます。猫が背伸びをするような感じになります。

ポイントとしては背骨の一部分だけではなく全体が同じように反るようにしていきます。

安定性の改善

椎間板性腰痛では、立ったときに適切な姿勢(適度に骨盤が前に傾いた状態)をとるための安定性が必要になります。

モーターコントロールの改善
大殿筋を活性化するエクササイズ

椎間板に負荷が加わる体幹を前屈させる動作において、負荷を軽減するためには前屈動作に先立って骨盤が前に傾くことが必要です。

そのためには、大殿筋(だいでんきん:お尻の大きな筋肉)の遠心性収縮(引き伸ばされながら筋肉を縮めるような収縮)によって骨盤がコントロールされないといけないので大殿筋を使いやすくする必要があります。

運動のやり方はうつ伏せになって体幹を安定させた状態で、片脚のひざを90°程度に曲げながら太ももの前が床から離れるようにします。
このときに膝と足のラインが天井を向いていて、真っすぐ上に向かって脚を上げていくようにします。

伸展型腰痛のトレーニング

伸展型腰痛とは腰をそらすと痛みが発生する、椎間関節性腰痛、腰椎分離症、棘突起インピンジメント障害に対してのトレーニングについてご紹介します。

姿勢の改善

伸展型腰痛は、骨盤が前に傾き腰椎が過度に反った姿勢で運動を繰り返すことで痛みが発生します。

そのため骨盤を後ろに傾きやすく腰椎が過度に反らないように骨盤と腰椎を適切な位置にすることが必要になります。

可動性の改善

股関節を曲げるときに使用する腸腰筋、大腿直筋(だいたいちょっきん)、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)が硬くなると腰が反った姿勢や動作になるためにストレッチングで柔軟性を高めていきます。

腸腰筋のストレッチング

写真2のように脚を前後に開いて腸腰筋を伸ばしていきます。伸ばす側の骨盤を前に押し出すようにすると筋肉が伸びます。

公園で腸腰筋のストレッチングをする女性
写真2. 腸腰筋のストレッチング
大腿直筋のストレッチング

写真3のように片足を持って上に引き上げながら膝を後ろに引いていきます。
このときに両脚を閉じて腰が反らないようにすると筋肉がより伸びます。

ジムで大腿直筋のストレッチングをしている男性
写真3. 大腿直筋のストレッチング
大腿筋膜張筋のストレッチング

仰向けでひざを伸ばした状態で片脚を天井のほうへ上げて内側に倒していきます(写真準備中)。

安定性の改善

伸展型腰痛の場合は腹筋群を活性化させて、腰椎が過度に反らないように制御することが必要になります。

モーターコントロールの改善

腹筋群を活性化させて身体を反らす背筋群の活動を低下させるようにします。

①運動のやり方は仰向けでひざ立てて90°程度に曲げます。
②両手はお腹の上に置き頭を上げて背中を丸くします。
③次に骨盤を後ろに傾けて腰を丸めます。
④戻すときは骨盤→頭の順番で行います。

仙腸関節障害のトレーニング

仙腸関節障害には次のパターンで痛みが発生します。

①仙骨が前に傾いたときに痛みがでる(ニューテーション)
②仙骨が後ろに傾いたときに痛みがでる(カウンターニューテーション)
③その両方で痛みがでる(不安定)

トレーニングの方法はタイプに応じて異なりるため、適切な評価が必要になります。評価には専門的な知識と技術が必要になりますので、仙腸関節障害が疑われる場合は専門医や理学療法士、アスレティックトレーナーなどにご相談ください。

トレーニングについては上記の理由から詳細は控え、大まかな内容のみご紹介します。

姿勢の改善

仙腸関節よりも前方に重心があるのか後方に重心があるのかを見極めながら、これらの負荷が生じない立位姿勢をとることが求められます。

座った姿勢では骨盤の下にある左右の座骨に荷重するよういしていきます。

可動性の改善

股関節の前後の可動性が低いと仙腸関節への負荷が増すため、ハムストリングスや腸腰筋のストレッチングで柔軟性を高めます。

また、股関節の回旋可動性が低いと身体を回したときに仙腸関節の負担が増すため必要に応じて柔軟性を向上させていきます。

安定性の改善

腹横筋の活性化エクササイズや大殿筋を活性化するエクササイズにて安定性の改善を行います。

モーターコントロールの改善

体幹の浅層にある外腹斜筋が過剰に活動すると仙腸関節への負荷が増して痛みを誘発します。

そのため体幹の深層にある腹横筋などを活性化させて外腹斜筋が過剰に活動しないようにしていきます。

筋性腰痛のトレーニング

筋性腰痛では筋肉や筋膜が付着する部分の負担を減らすことが必要になります。

姿勢の改善

姿勢によって筋肉が過剰に緊張している場合は、その緊張を減少するための姿勢になるようにしていきます。

可動性の改善

筋肉と筋膜の滑りがわるいと筋性腰痛の原因になるため、滑りをよくするためのストレッチングをしていきます。

ポイントとしては特定の箇所だけを伸ばすのではなく、全体を伸ばすようにすると効果的です。

例)身体の後ろ側を伸ばすやり方

脚を前に伸ばした長座の姿勢から、前屈してつま先を持ち首も丸めるようにすると足の裏から首筋までが伸びます。

※重度に滑りがわるい場合は専門家による筋膜リリースが必要になることがあります。

安定性の改善

腹横筋の活性化エクササイズや大殿筋を活性化するエクササイズにて安定性の改善を行います。

モーターコントロールの改善

背筋群が過剰に活動するような運動だと負荷が増すため、伸展型腰痛のトレーニングで紹介した腹筋運動などを行い背筋群の活動を低下させます。

①運動のやり方は仰向けでひざ立てて90°程度に曲げます。
②両手はお腹の上に置き頭を上げて背中を丸くします。
③次に骨盤を後ろに傾けて腰を丸めます。
④戻すときは骨盤→頭の順番で行います。

腰部脊柱管狭窄症のトレーニング

姿勢の改善

脊柱管を拡大させるために骨盤を後ろに傾けて腰椎が過剰に反らないような姿勢が求められます。そのため骨盤を後ろに傾ける作用がある腹筋群を活性化させて姿勢を保持するようにしていきます。

可動性の改善

仰向けになりひざを抱え込みながら首を丸めるようにします。
この運動で背骨の可動性向上と腹筋群を活性化することができます。

また腸腰筋が硬くなると歩行のときに骨盤が前に傾くため脊柱管が狭くなるので、伸展型腰痛で紹介した腸腰筋のストレッチングも大変有効です。

安定性の改善

腹横筋の活性化エクササイズや大殿筋を活性化するエクササイズにて安定性の改善を行います。

モーターコントロールの改善

四つん這いになり骨盤を後ろに傾かながら背中を丸めるようにします。
次に骨盤と背中を丸めたまま正座をしていきます。

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腰痛のためのトレーニングのまとめ

  • 働く人の8割以上が腰痛を経験しています。
  • 腰部障害は進行度によってステージ1~5に分けられます。
  • ステージ1~3の段階で負荷を減らすことがステージ4または5への移行を阻止することにつながります。
  • 腰椎は身体を支える、身体を動かす、神経組織を保護する機能があります。
  • 腰を動かす場合は腰椎がニュートラルゾーン内に留めるようにすることが大切になります。
  • 腰痛のトレーニングでは、各病態を考慮して適切なエクササイズを選択することが必要になります。
  • 腰痛のトレーニングでは姿勢改善、可動性改善、安定性改善、モーターコントロール改善を目的に行っていきます。

参考文献

1)金岡恒治. スポーツ傷害 予防と治療のための体幹モーターコントロール. 株式会社中外医学社. 2019.

2)金岡恒治, 成田崇矢. 腰痛のプライマリ・ケア. 株式会社文光堂. 2018.

この記事を書いた人

パーソナルトレーナー齊藤登

トータルフィットネスサポート代表
齊藤 登

2004年に栃木県宇都宮市にて有限会社トータルフィットネスサポートを設立しパーソナルトレーニング、国民体育大会の帯同トレーナー、医療機関での運動指導、スポーツや医療系専門学校の講師、運動や健康づくりに関するセミナーの開催などを中心に活動している。

NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)ジャパン北関東地域ディレクターとして、日本におけるストレングス&コンディショニングの普及およびスポーツと健康に携わる専門職の育成にも力を入れている。

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