腰を痛めた女性
目次
表1. 障害のステージ分類

炎症について詳しく知りたい方は「プロがおすすめ!けが・痛みを予防する効果的なトレーニングのやり方」の記事をご一読ください。

炎症が起こっている組織に線維芽細胞(せんいがさいぼう)が集まり、コラーゲンを産生して損傷した部位を修復します。

この時期に炎症を起こしている組織に負荷が加わり続けると、炎症は継続して正常な修復が妨げられます。
線維芽細胞はコラーゲンを作り続け、神経が組織にとどまるため痛みが発生します。

このような不適切な状態では骨の増殖や吸収が生じたり、背骨と背骨の間にある椎間板が変性し組織の変形が起こります。

腰痛の重症度が軽いステージ1~3の段階で微細損傷や炎症の原因となった背骨への負荷を減らすことが、重症度の高いステージ4または5への移行を阻止することにつながります。

頭蓋骨・背骨・骨盤の模型
腰椎のエラスティックゾーンとニュートラルゾーン
図2. 関節可動域における領域

ステージ1~3に該当する腰痛の種類をご紹介します。

椎間板ヘルニアの骨の模型

原因の一つとして身体を前屈したときに腰椎の土台となる骨盤が一緒に前に動かないことが挙げられます。

腰痛の骨の模型

その特徴は腰を反ったり、ひねったりする動きによって痛みが出ることです。
特にスキーや野球のピッチャーなどスポーツをする方に多くみられます。

原因の一つとして腰を反ったり、ひねったりするときに身体全体で動かすことができずに腰に負担が集中してしまうことが挙げられます。

仙腸関節(せんちょうかんせつ)は骨盤の中央にある仙骨(せんこつ)と両サイドにある腸骨(ちょうこつ)が結合する関節です。

痛みのパターンとしては身体を丸めたときに痛みが出るものを「ニューテーション型」、逆に反ったときに痛みが出るものを「カウンターニューテーション型」、丸まっても反っても痛みが発生するものを「不安定型」と呼んでいます。

改善策としては仙腸関節を安定するための体幹の筋肉を活性化と、仙腸関節の負荷を減らすための骨盤についている筋肉の柔軟性向上、適切なタイミングで筋肉が活動できるようにしていきます。

筋膜に何らかの原因で微細損傷が生じて炎症すると筋膜の周囲に線維化が起こり筋肉の滑りが悪くなります。

背骨を支える脊柱起立筋(背骨の両サイドにある筋肉)は運動や姿勢を保つために必要な筋肉です。

脊柱起立筋が遠心性収縮(引き伸ばされながら筋肉を縮めるような収縮)を繰り返すことで筋肉がついている骨の付着部付近で障害が発生します。
よく起こる場所としては骨盤のすぐ上に痛みが生じます。

脊柱起立筋に過度な負荷が加わるアスリートや背骨が丸まっている高齢者などは姿勢を保つために脊柱起立筋の活動が高まるため付着部障害がよく起こります。

また体幹の安定性が不十分な方や殿筋(お尻の筋肉)がうまく使えていない方なども脊柱起立筋に負荷が増すため同障害のリスクが高まります。

体幹の筋肉に遠心性収縮(引き伸ばされながら筋肉を縮めるような収縮)が生じ、筋肉や筋膜が引き離されるような大きな力が加わると筋肉と筋膜の境界部に肉ばなれが起こります。

一般の方にはあまり起こらない障害ですが、野球・やり投げ・カヌー・ハンドボールなどの体幹を素早く回旋させるアスリートに体幹の筋肉の一つ内腹斜筋に肉ばなれが発生することがあります。

体幹筋付着部の裂離骨折(れつりこっせつ)
角同士で衝突するヤギとヤギ

改善策としては 胸椎・胸郭(あばら)・骨盤の可動性 を高めて、身体を沿ったときに全体を動かせるよにすることで腰の負担を減らしていきます。

ステージ4~5に該当する腰痛の種類をご紹介します。

腰椎にストレスが加わり続けると骨が形成される能力が低下することで骨が弱くなり疲労骨折を起こします。
疲労骨折は同じ場所に小さな力が加わり続けることで起こる骨折になります。

亀裂が小さい場合は骨折部位の負荷をなくすことで骨癒合(こつゆごう:骨がくっつく)することがありますので、医師の判断のもと治療を行っていきます。

また痛みに関しては疲労骨折が進行しているときは腰痛が生じますが、末期になると腰痛を伴わないことが多いです。

腰椎椎間板ヘルニアのMRI画像

一方腰椎3番と4番の間のヘルニアでは太ももの前の痛みや太ももの筋力低下、しびれなどが生じます。

その際に座って腰を丸める姿勢やしゃがみ込みをして休息すると歩行が再開できるようになります。
腰を丸めることで脊柱管狭窄が緩み神経症状が一時的に改善することでこのような現象が起こると考えられています。

公園で四つん這いから腕を足を上げてバランスをとる女性
写真1. バードドッグ
公園で腸腰筋のストレッチングをする女性
写真2. 腸腰筋のストレッチング
ジムで大腿直筋のストレッチングをしている男性
写真3. 大腿直筋のストレッチング

※重度に滑りがわるい場合は専門家による筋膜リリースが必要になることがあります。

脊柱管を拡大させるために骨盤を後ろに傾けて腰椎が過剰に反らないような姿勢が求められます。そのため骨盤を後ろに傾ける作用がある腹筋群を活性化させて姿勢を保持するようにしていきます。

この記事を書いた人

パーソナルトレーナー齊藤登

トータルフィットネスサポート代表
齊藤 登

2004年に栃木県宇都宮市にて有限会社トータルフィットネスサポートを設立しパーソナルトレーニング、国民体育大会の帯同トレーナー、医療機関での運動指導、スポーツや医療系専門学校の講師、運動や健康づくりに関するセミナーの開催などを中心に活動しています。

NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)ジャパン北関東地域ディレクターとして、日本におけるストレングス&コンディショニングの普及およびスポーツと健康に携わる専門職の育成にも力を入れています。