笑顔で運動を楽しむ高齢者の夫婦

介護予防のための運動では「動きやすくけがしにくい」身体づくりが大切になります。

そこで今回は宇都宮のパーソナルジムで20年以上の指導歴を持つプロのトレーナーが作成した、日常動作が楽にできるようになり、転倒防止や転倒時での危険を回避するためのプログラムをご紹介します。

このプログラムを実践して介護を必要としない自分らしく生きれる人生を目指しましょう。

介護予防における運動の考え方

介護予防では自分のことは自分でできる状態、即ち介護を必要としない状態を維持していくことが重要になります。

運動は年齢とともに低下しやすい体力や運動能力といったものを向上させる働きがあり、介護予防においては有効な手段の一つになります。

また、転倒により背骨の圧迫骨折や大腿骨頚部骨折などのケガから介護状態に至るケースも多くみられますが、転倒への対策も運動を工夫することで行うことができます。

介護予防の運動プログラムを作成するときに大切になるのは「動きやすくけがしにくい」身体づくりをいかにして実現していくかです。
動きやすくてケガしにくいとは言い換えると以下のようになります。

  • 動きやすい=楽に動ける
  • けがしにくい=転倒しない、転倒したとしても自ら危険を回避できる

この考え方はアスリートのコンディショニングと同じになります。アスリートと介護予防を目的とした高齢者では運動の強度や方法は違いますが考え方は通ずるものがあります。

プログラムを作成するときの考え方

プログラムではまず長期計画を立てます(表1)。
導入期→基礎期→発展期といったように段階的に進めていくことで、体力や運動能力をスムーズに向上させていくことが可能になります。

期分け導入期基礎期発展期
目標フォームの習得
運動になれる
基礎体力の向上
運動能力の向上
日常動作の改善
転倒防止と転倒時の危険回避
表1. 長期計画の例

各期のプログラムでは、介護予防に対して優先度や有用性が高いものから順にエクササイズを配列していきます。

参考までに導入期・基礎期・発展期のプログラム例を示します。

導入期におけるプログラムの例

ウォームアップ

順番運動の効果エクササイズ
1メンタルのウォームアップどうなりたいかをイメージする→今日の目標を決める
2呼吸法の習得肺ストレッチング(背中丸めで吸う、胸反らしで吐く)
3脳機能賦活コグニサイズ
4動的柔軟性向上動的ストレッチング
5身体の効果的な使い方の習得重心を意識する(お腹の中に意識を向ける)
エクササイズの紹介
重心始動のやり方 ステップ1
№5 重心を意識する(お腹の中に意識を向ける)

主運動

順番運動の効果エクササイズ
1運動能力向上コーディネーションエクササイズ
2動き出し・切り返し動作改善スピード&アジリティエクササイズ(早歩き→ストップ)
3瞬発力向上プライオメトリックス(下半身・上半身)
4下半身の筋力向上スクワット(両手胸前)
5上半身の筋力向上ひざつき腕立て姿勢での肩甲骨内外転
6下半身の筋力向上スプリットスクワット(両手胸前)
7上半身の筋力向上ショルダープレス(ニュートラルグリップ、ペットボトル使用)
エクササイズの紹介
自体重でスクワットのエクササイズを実施している男性
№4 スクワット
(画像をタップすると動画をご覧になれます)
肩甲骨を動かすエクササイズ
№5 ひざつき腕立て姿勢での肩甲骨内外転
自体重でスプリットスクワットのエクササイズを実施している男性
№6 スプリットスクワット
(画像をタップすると動画をご覧になれます)

クールダウン

基礎期におけるプログラムの例

順番運動の効果エクササイズ
1静的柔軟性向上静的ストレッチング
2セルフケアセルフマッサージ・セルフ筋膜リリースなど
3メンタルのクールダウンマインドフルネス
4今日の振り返り運動の感想や今日の目標は達成できたかなど
エクササイズの紹介
脳をリフレッシュするマインドフルネスのやり方
№3 マインドフルネス

ウォームアップ

順番運動の効果エクササイズ
1メンタルのウォームアップどうなりたいかをイメージする→今日の目標を決める
2呼吸法の習得腹式呼吸
3脳機能賦活コグニサイズ
4動的柔軟性向上動的ストレッチング
5身体の効果的な使い方の習得重心を意識しながら動作を行う(歩行や日常動作など)

主運動

順番運動の効果エクササイズ
1運動能力向上コーディネーションエクササイズ
2動き出し・切り返し動作改善スピード&アジリティエクササイズ(早歩き→方向転換)
3瞬発力向上プライオメトリックス(下半身・体幹・上半身)
4全身の筋力向上スロープッシュプレス(ニュートラルグリップ、ペットボトル使用)
5下半身の筋力向上 スクワット(両手胸前、重心を意識しながら行う)
6上半身の筋力向上 ひざつき腕立て伏せ
7下半身の筋力向上 フロントランジ(両手胸前、ストップ型)
エクササイズの紹介
フロントランジのエクササイズを実施している男性
№7 フロントランジ
(画像をタップすると動画をご覧になれます)

クールダウン

順番運動の効果エクササイズ
1静的柔軟性向上静的ストレッチング
2セルフケアセルフマッサージ・セルフ筋膜リリースなど
3メンタルのクールダウンマインドフルネス
4今日の振り返り運動の感想や今日の目標は達成できたかなど

発展期におけるプログラムの例

ウォームアップ

順番運動の効果エクササイズ
1メンタルのウォームアップどうなりたいかをイメージする→今日の目標を決める
2呼吸法の習得クロコダイルブリージング
3脳機能賦活コグニサイズ
4動的柔軟性向上動的ストレッチング
5身体の効果的な使い方の習得重心を意識しながら動作を行う(歩行や日常動作など)

主運動

順番運動の効果エクササイズ
1日常動作改善重心始動でのイスからの立ち上がり
2転倒防止一歩踏み出しストップ+両手で顔カバー(開眼)
3転倒時の危険回避ひざ立ち姿勢からの前方倒れこみストップ+両手で顔カバー(開眼)
4運動能力向上コーディネーションエクササイズ
5動き出し・切り返し動作改善スピード&アジリティエクササイズ(座位→早歩き→方向転換)
6瞬発力向上プライオメトリックス(下半身・体幹・上半身・複合)
7爆発的パワー向上 オリンピックリフティング(ペットボトルなどを使用)
ダンベルを使ってハングクリーンのエクササイズを実施している男性
№7 オリンピックリフティング
(画像をタップすると動画をご覧になれます)

クールダウン

順番運動の効果エクササイズ
1静的柔軟性向上静的ストレッチング
2セルフケアセルフマッサージ・セルフ筋膜リリースなど
3メンタルのクールダウンマインドフルネス
4今日の振り返り運動の感想や今日の目標は達成できたかなど

実施するエクササイズについて

エクササイズを決めるときは、介護予防の運動目的である楽に動けて、転倒しない、転倒したとしても自ら危険を回避できるためのエクササイズを考えます。
次にベースとなる一般的なエクササイズを選んでいきます。

このように逆から考えていくことで、より目的に合ったプログラムを作成することができます。

参考までにエクササイズ例を示します。

エクササイズ例①

効果:イスから楽に立ち上れるようになる

スクワットと椅子から立ち上がる動作
スクワット→重心始動での立つ動作(◎は重心の意識)

重心始動とは

重心意識(自分が重心だと思う場所)から動かし始める身体の使い方のことで、重心始動を行うことで重心付近の体幹や股関節の大きな筋群が優先的に使われやすくなり、大きな力を発揮することができます。

逆に足先や手先などから動かし始めると、末端部の小さな筋群が使われやすくなるために大きな力を発揮することが難しくなります。

重心始動ではより大きな力が発揮されるために、イスから立ちがあるときに自分の体重に対しての負担度(相対強度)が低くなるために通常よりも楽に立ち上がることができます。

重心始動について詳しく知りたい方は記事「アスリート必見!プロがおすすめ誰でも運動能力を高めるコツ教えます」も併せてお読みください。

エクササイズ例②

効果:転倒防止

フロントランジと一歩踏み出して転倒を防止する動作
フロントランジ→一歩踏み出しストップ(顔面カバー)

効果:転倒時の危険回避

腕立て伏せと前方に倒れこんでストップする動作
ひざつき腕立て伏せ→倒れ込みストップ(顔面カバー)

介護予防はパーソナルトレーニングがおすすめ!

介護予防のための運動プログラムについてご紹介してきましたが、「自分一人だけでは大変」「運動プログラムはわかったが実際にどうやるのかよくわからない」と思われる方はパーソナルトレーニングがおすすめです。
パーソナルトレーニングならマンツーマン指導で自分の体力レベルに合わせながら無理なく進められるので安心です。

トータルフィットネスサポートでは、介護予防のためのパーソナルトレーニングを実施しております。また自治体様向けに集団指導でのご依頼も承っております。

パーソナルジムは宇都宮にありますが、遠方の方でもオンラインでサービスを受けられます。
ただいま無料体験キャンペーンも実施していますので、ぜひこの機会にご利用ください。

介護予防の運動プログラムのまとめ

  • 介護予防では自分のことは自分でできる状態を維持していくことが重要
  • 運動プログラムの作成では「動きやすくけがしにくい」身体づくりの実現を目指す
  • プログラムでは長期計画を立てることで体力や運動能力をスムーズに向上させるとが可能になる
  • エクササイズの選択では楽に動けて、転倒しない、転倒したとしても自ら危険を回避できるためのものを考える

引用・参考文献

1)齊藤登. 月刊健康づくり2021年4月号. 高齢者に対しての介護予防を目的とした集団指導プログラム. 公益財団法人健康・体力づくり事業財団. 2021.

この記事を書いた人

パーソナルトレーナー齊藤登

トータルフィットネスサポート代表
齊藤 登

2004年に栃木県宇都宮市にて有限会社トータルフィットネスサポートを設立しパーソナルトレーニング、国民体育大会の帯同トレーナー、医療機関での運動指導、スポーツや医療系専門学校の講師、運動や健康づくりに関するセミナーの開催などを中心に活動しています。

NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)ジャパン北関東地域ディレクターとして、日本におけるストレングス&コンディショニングの普及およびスポーツと健康に携わる専門職の育成にも力を入れています。

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