運動センスってスポーツに関係ない?

人は未知なる才能を秘めている

スポーツをやってて同じ練習やトレーニングをしているのに自分よりもどんどん上手になっていく選手っていませんでしたか?
これってスポーツの素質とか運動センスによるものだと思いますよね。

実は違うんです。運動能力を高めるにはちょっとしたコツがあって、それを誰かに教わらなくても勝手にできてしまう人がいるだけなんです。

そこで今回はトップアスリートに共通する運動能力を高めるコツについてご紹介します。
さあ今日からあなたもトップアスリートの仲間入り!

スポーツがなかなか上達しない、繰り返しけがをするのはなぜ?

「スポーツを毎日誰よりも練習しているのに思うように上達しない」「ケガが治ったなと思ったらまたケガをしてしまった」なんてことよくありますよね。

これには理由があるんです。
それは、日常動作の使い方でスポーツをするからです。

スポーツに必要な運動能力とは

スポーツに必要な運動能力を図1に示します。

スポーツに必要な身体を自由に操る能力
図1

スポーツでは身体を操るために様々な運動能力が必要になります。
言い換えるとスポーツでは非日常的な運動能力が必要ということです。

日常動作とスポーツ動作

では日常動作とスポーツ動作を比べてみましょう。下の写真をご覧いただくと日常では手先を使って動かすことが多く小さな力で充分といえます。

日常動作では手先を使う
日常生活で必要となる動作

一方スポーツでは身体全体を使って動かすため素早く大きな力が必要となります。

スポーツでのダイナミックな動き
スポーツで必要となる動作

以上のことから日常とスポーツでは身体的に要求されるものが違うということがわかります。

スポーツをする前にやるべきこと

日常動作の使い方のままでスポーツをするとどうなるでしょうか。
末端部の手先や足先を主に使うため小さな動きしかできず、また一部分の関節や筋肉に大きな負荷が加わることでけがをしやすくなります。

日常動作のままでスポーツを行うとスポーツパフォーマンスの低下を招く
図2

図2をご覧いただくとわかるように、結果的にスポーツパフォーマンスの低下を招いてしまします。

そこで日常動作をスポーツに適した使い方に変更することで、身体全体を使ったしなやかなで爆発的なパワーを発揮することが可能になり動きやすくなります。

また身体に加わる負荷も一部分ではなく全身に分散しますのでけがしにくくなります。

日常動作をスポーツに適した使い方に変更するとスポーツパフォーマンスが向上する
図3

図3をご覧いただくとわかるように、結果的にスポーツパフォーマンスの向上につながります。

これらはアスリートが理想とする「動きやすくけがしにくい」状態をつくりスポーツパフォーマンス向上に繋がります。

地球上で最も優れた運動能力の持ち主

突然ですが質問です。地球上で運動能力が高いのは誰だと思いますか?
答えはこの方たちです。

野生の動物たち

ご覧の通り野生の動物たちです。

動物は人間よりも脳は発達していませんが、身体を使うことに関してはスペシャリストです。
特に野生の動物たちは生息地域に順応した身体能力を持ち、無駄のない効率的な動きを身に付けてます。

参考までに野生動物の走るスピードを表1に示します。ちなみにウサインボルトの瞬間最高スピードは時速44.46キロになります。

動物走るスピード
チーター115キロ
ライオン80キロ
シマウマ65キロ
キリン50キロ
アフリカゾウ40キロ
表1.動物の走るスピード

野生動物の身のこなし

野生動物の身体の使い方を観察していくと身体の中心から動き始めていることがわかります。

走っているチーター
チーターの走り
(画像をタップして動画をご覧ください)

チーターの走っている動画をご覧いただくと1分40秒あたりで方向を変更するのですが、末端の足先からではなく中心の体幹が最初に動いているのが確認できます。

動物は体の中心、言い換えるとそう重心から動いているのです。

トップアスリートの身のこなし

動物のように重心から動くって人間でもできるの?

アメリカンフットボールでボールを持ってステップを切るアスリート
トップアスリートの動物的な動き
(画像をタップして動画をご覧ください)

では元NFL選手のバリー・サンダースのプレーを見てみましょう。
特に圧巻のプレーが9分30秒からの動きです。
動物のように重心から動いて誰も彼に触ることすらできません。

ご覧にように人間でも重心から動くことは可能です。

参考までに重心から動いている(もしくは意識している)トップアスリートの一部をご紹介します。
※複製権の侵害になるため動画をご紹介すること難しくテキストのみの説明とりなります。

イチロー(野球)

野球の試合中に走塁している選手

イチローというと華麗なバッティングやレーザービームと呼ばれる送球が注目されがちですが、実は盗塁もすごい記録を残しています。

イチローは2006年のシーズンに45盗塁を記録し、盗塁成功率95.7%という成果をあげています。
盗塁成功率95.7%は記録が残る1951年以降、シーズン40盗塁以上を決めた選手の中では歴代1位になります。

イチローは2008年1月5日放送のテレビ朝日「イチ流2008ターニングポイント」とうい番組に出演した際に盗塁の極意についてこのように語っています。

重心の位置がスタートダッシュを決める大きな要素

「スタートのとき重心を低くっていうことがよく言われることだと思うんですけど、でも低すぎる体勢っていうのはそのまま横には移動できないんですよ」
「この低さでは無理なんですよ」
「この低さでいうと結局上にあがっていくんですよ」
「かといって高すぎると横に移動するときに沈む時間がいるんで、その間位が僕は好きなんですよ」
「この位置ならそのまま走って行けるんですよ」

このことからイチローはスタートにおける重心軌道の無駄を最小限に抑えていることがわかります。
また動画を見る限り最初に外側の足で地面を蹴ってその反動で横に移動するのではなく、重心から横方向に動きだしてからその後で足の蹴り出しが見られます。

スタートを切ったあとはベースとベースを結んだ直線ラインを移動

「一塁から二塁までのラインを真っ直ぐに引いたときに、真っ直ぐいけたら一番いいんですよね」
「ただどうしてもこのライン上に立つと真横にはいけないんですよ(右足に左足が接触するため物理的に難しい)」
「いけないからちょっと下がるわけですね」
「ようはスタートの左足の一歩目がラインにいくようにしたいんですよ」

イチローは盗塁の際に重心を最短コースで移動させることを意識していることがわかります。

伊藤美誠(卓球)

卓球台の上にあるラケットとボール

卓球女子世界ランキング2位の 伊藤美誠 (2020年4月時点)。

2018年9月23日放送のNHKスペシャル「シリーズTOKYOアスリート卓球」にて伊藤美誠の代名詞ともいえるテクニック「みまパンチ」をハイスピードカメラで解析しました。

その結果分かったことはラケットでボールを打つときの視線が相手に向けられていることがわかりました。
つまりボールをまったく見ていなかったのです。

番組の中で伊藤美誠はプレーしているときの見え方について次のように答えています。
「ほぼ相手見ています」
「(ボールを)点で見てはいない、絶対」
「ここらへん(自分の横の辺り)でうっすら見えるんですよ」
「たぶん見える範囲広いんですよ、どこまでも見える」

これはどういうことかというと周辺視システムを作動させてプレーをしていることを意味しています。
人間は中心視と周辺視という2つの視覚システムを持っています。両システムの違いについては表2をご覧ください。

システム中心視周辺視
視界狭い広い
解像度高い低い
高速度の刺激に対する反応遅い速い
表2. 中心視と周辺視の機能的な違い
【参考文献】福田忠彦. 運動知覚における中心視と周辺視の機能差. テレビジョン学会誌. 第33巻 第6号. 1979.

スポーツにおいては日常のようにパソコンや本など細かい文字を見る必要性がなく、また相手選手やボールなどの速い動きに対して瞬時に反応することが求められるため周辺視を使うことはスポーツにおいて効果的です。

私が行った実験において重心を意識すると周辺視が作動しやすくなる結果が得られました。
このことから伊藤美誠はプレー中に重心を意識(または無意識的に意識)している可能性があります。

白鵬(相撲)

相撲の土俵

大相撲歴代2位の63連勝を記録した横綱白鵬

2010年11月28日放送のNHKスペシャル「横綱白鵬~"最強"への挑戦~」で白鵬の強さについて科学的な検証が行われました。

番組の中で光刺激に対して素早くジャンプする全身反応時間をテストしたところ0.149秒という結果がでました。
これはウサインボルトの0.146秒に迫る結果となりました。

20~65歳の男女36,998名を対象にした全身反応測定において男性では約0.35秒~0.38秒、女性では約0.39秒~0.42秒でしたので0.149秒という数値は驚異的な反応だといえます。

なぜ反応時間がこんなにも速いのか、動作解析によって次のことが分かりました。
一般的な反応では光の刺激があった後に一旦身体が下に沈んでからジャンプをしますが、白鵬は光に反応してから下に沈むことなくジャンプしていました。

一般的な反応で下に沈む理由としては、ジャンプする前に沈むことで身体のバネを作動させることができるからです(伸長-短縮サイクル)。

バネを使うと力が素早く出やすなるという利点があります。
しかし反応からの動作においてはできるだけ大きな力を出すよりも、動き出すタイミングが速い方が重要になります。

白鵬の身体の使い方は、イチローが盗塁の際に見せた重心から動き始める使い方と非常によく似ています。

ロナウジーニョ(サッカー)

サッカースタジアムの中にあるサッカーボール

現役時代、稀代の天才と呼ばれ数々の名プレーを残してきたロナウジーニョ

2006年5月28日放送のNHKスペシャル「ドイツW杯魔術師ロナウジーニョ」にて、ロナウジーニョが多用するエラシコという技を筑波大学体育系教授の浅井武先生が動作解析しました。

動作解析の方法はロナウジーニョが実際の試合の中でプレーしているエラシコの動画をもとに、ロナウジーニョの顔や関節21か所を線で結んで身体の動きと重心移動の軌跡を観察しました。

するとわかったのは、ロナウジーニョの身体はくねくねと右や左に動いているのに重心の軌道は一定で同一方向に移動していたのです。
これは、重心が先行して動いてその中で身体を左右に振っているということを意味しています。

なぜそのようなことが言えるかというと、通常身体を先に左右に振ってしまうと重心も左右に振られるからです。
当然動作を切り返すときに重心を戻さなくてはならないため動作スピードやタイミングが遅くなりエラシコ自体の成功率も低下してしまいます。

ロナウジーニョの動きが動物のようなしなかやかさを持っているものうなずけます。

内村航平(体操)

体操の鉄棒競技をしている選手

オリンピック4大会に出場し、世界体操競技選手権で個人総合6連覇を成し遂げた内村航平

2012年7月15日放送のNHKスペシャル「ミラクルボディー内村航平 驚異の空中感覚」にて科学的な検証が行われました。

内村航平の最大の強みと言えば微動だにしない完璧な着地です。
それを可能にしていたのは空中での自分の位置を正確に把握する能力、体操の世界で空中感覚と呼ばれるものでした。

子どもの頃に体操教室のコーチであった母が空中で1回2回ってひねるときどうやって回数を区別してるの?と尋ねたところ、こう答えたそうです。
「そんなの周りの景色見てれば数えられるよ」

また番組の中のインタビューでこのように話しています。
「空中にいるときに自分がどこにいるのか分かっている」
「自分で今どんぐらいの高さにいて、どんぐらいのひねりスピードでっていうのを瞬時にわかるんで」

番組では頭部に小型カメラを装着し床からの空中3回ひねりの技を行った後、本人に撮影した動画を見てみらいました。
比較のためヨーロッパ王者の体操選手フラヴィウス・コチにも同一の内容を行いました。

実験でわかったことは内村航平は動画と同じものが見えていたと答えたのに対し、フラヴィウス・コチは空中で天井など周りを見ようとすると平衡感覚が狂うため見ていないと答えました。

内村航平は周りの景色を見ることで自分の位置や体勢を把握していたのです。

私が行った実験において重心を意識すると速いものがゆっくりと見える結果が得られました。

内村航平はおそらく空中で高速に回転する中でも重心が意識(無意識的な意識)できているため周りを見ることができるのかもしれません。
また推測するに内村航平は子どものころに練習で養ったものの中に重心の意識があったのではないかと思います。

筒香嘉智(野球)

ナイターの野球場

日本プロ野球にて2016年の本塁打王と打点王に輝いた筒香嘉智

2017年2月26日放送の情熱大陸「筒香嘉智/侍ジャパン主砲!人生飛躍の鍵…心技体、独自の鍛え方とは」にて日頃の重心への意識が紹介されました。

筒香嘉智はまず朝起きてベッドから立ち上がったときに重心を意識して安定させるそうです。それ以外にも歯を磨いているときなど日常の中で重心を意識する徹底ぶりでした。

練習以外では自分で自作したサンダルを履いておりインタビューで次のように答えています。
「ランニングシューズだとかかとから入って身体の重心がおかしくなりやすいんで、これだと裸足で歩いた時と一緒のような重心のかかり方と足の入り方がする」

また動体視力を測定するビジョントレーニングのときにこう答えています。
「(ボールを)ボヤッと見る」
「身体の重心がボールの見方でかわってくるのは、(重心が)落ちる、下に」

番組スタッフがボヤッと見たほうが力が伝わる?と尋ねると。
「力も伝わると思うし力みもなくなる」と答えています。

食事風景を撮影した場面ではこう話しています。
「心の重心が浮いているなっと思うときは部屋も散らかってますよね」

これらの発言から、彼は経験の中で重心と視覚の関係重心と力の関係重心とメンタルの関係を認識していると思われます。
またボールの見方に関しては卓球の伊藤美誠と非常によく似ています。

その他

こちらにご紹介したアスリートはほんの一部となりますが、スピードスケートの小平奈緒も動物の動きをヒントしたスケーティング姿勢や動物のように背骨を1つずつ動かすトレーニングを取り入れています。

陸上短距離走の山縣亮太もチーターの走りを参考にしています。
2018年6月19日放送のNHK「グッと!スポーツ 天才のこだわり陸上 山縣亮太」にて、番組の中でチーターの動画を見ながら「頭がぶれてないのはわかりますか?地面を蹴っても力が上に行かず、前に行ってる。こういう走りを目指してる」と話していました。

以上のように重心から動かし始める動物の動きはスポーツにおいても有効であり、様々な競技のトップアスリートに共通する身体の使い方といえます。

重心を起点に身体を動かす「重心始動」

野生動物の動きをヒントして"すべては重心を基点に動き出す"という考え方を体系化したものを私は重心始動と名付けました。

重心始動では3つのポイントがあります。
①重心だと思うところを意識
②お腹で重心を操作して最適な高さにセット
③重心から動き始める

重心始動の効果

重心始動と通常の使い方で運動能力に変化が生じるのか比較実験をしてみました。
測定項目は動体視力・反応速度・動的バランス・筋力・メンタル・持久力・スピードの7項目になります。

実験の結果、通常の使い方に比べ重心始動の方が全ての項目において高い数値を記録し平均22.7%向上しました(図4)。

重心始動による運動能力の変化
図4

これは重心始動の身体の使い方を用いることで様々な運動能力が一気向上するということを意味しています。
参考までに研究結果をまとめた抄録のリンクを貼っておきますので、よろしければご覧ください。

重心始動のやり方

通常の使い方と重心始動でどのように違いができるのか実感してみましょう!

動画1.速いリズムのスクワット

最初に通常のやり方で身体を動かしてもらいます。
やっていだきたいのは動画1のような速いリズムのスクワットで足で地面を蹴るようにして行ってみてください。

スクワットをやりながら見え方だったり力の入り方だったりを感じ取ってみてください。

スクワットをしてみてどんな感じでしたか?
おそらく図5に示したように足がフワフワしたり自分が思っている動きとのズレを感じたと思います。

通常動作での高速ハーフスクワット
図5. 通常動作のスクワットでの運動能力

重心始動の3つのステップ

では重心始動のやり方を3つのステップでご説明していきます。

重心始動のやり方 ステップ1
図6. 重心始動ステップ1

ステップ1では、まずお腹の中の重心だと思うところを意識します 。
そして図6のように重心の意識をお腹の中央になるようにしていきます。
イメージとしては重心の意識をお腹の奥のほうにしまい込む感じです。

これができたら次のステップに移ります。

重心始動のやり方 ステップ2
図7. 重心始動ステップ2

ステップ2ではお腹で重心位置を操作して最適な高さにセットします。

重心は下腹をへこませると上がり逆に下腹を膨らませると下がります。
これは身体の重量分布が変化することで起こります。

重心を上下に操作して一番安定する位置を見つけてみましょう。
イメージとしては落ち着くと感じたところが自分にとっての最適な位置になります。
この操作が難しい場合はステップ1の重心を意識するだけでも大丈夫です。

重心始動のやり方 ステップ3
図8. 重心始動ステップ3

いよいよ最後のステップになります。
身体を動かすときに重心から動き始めるようにします。

図8の左側の画像のようにしゃがむときは重心から下に移動する感じで行います。
また立ち上がるときは図8の右側の画像のように重心から上に移動する感じになります。

最初のうちは難しいからもしれないので腰から動かし始めても大丈夫です。
徐々に慣れてきたら重心から動かすようにしてみてください。

重心始動の効果を体感

最初に行っていただいた高速ハーフスクワットを今度は重心始動でやってみましょう。

重心始動での高速ハーフスクワット
図9. 重心始動のスクワットでの運動能力

通常動作のスクワットと比べて違う感覚になりませんでしたか?
おそらく図9に示したように安定していて自分が思った通りに身体が動いたのではないでしょうか。

ではここから運動能力ごとに重心始動による効果についても体感していきましょう。

重心始動での動体視力を体感する
図10. 重心始動による動体視力の向上

からだを左右に速く動かしたときの見え方を通常動作と重心始動とで比べてみましょう。

最初に通常の使い方で行ってください。
やり方は図10の画像のように中腰になり身体を左右に5~6回速く動かしていきます。
このときの周りの景色の見え方を覚えておいてください。

おそらく視界がブレて残像があるような感じになったのではないでしょうか。

では重心始動でやってみましょう。
まず重心を意識します。次に重心を上下に操作して一番いい高さにセットします。
重心から身体を左右に動かしてみて周りの景色の見え方を確認してみてください。

最初にやった通常の使い方と比べると視界が安定し残像も少なくなったのではないでしょうか。

今行ったのは自分が動いた場合の見え方ですが、相手がパンチを打ってきたりボールが飛んでくるなど自分が止まっている状態で動いている状況においても重心始動を使うことで見え方が変わります。

私が行った実験において重心始動を用いると通常よりもゆっくりと見えることがわかりました。
また、まばたきがなくなる(または少なくなる)こともわかりました。

なぜこのようなことが起こるのかというと、重心を意識することで物を見るシステムが中心視から周辺視に切り替わるためだと思われます。

中心視とは細かなものをスポット的に見る見方で、文字を書くとか本を読むときなどに適しています。

一方、周辺視は全体を見る見方で、視野が広くなり動きに対しての反応が速くなりますのでスポーツに適しています。

野球界で「ボールが止まって見えた」という言葉が有名ですが、これは重心を意識した結果、周辺視になりボールがゆっくりと感じたのではないかと思います。

重心始動での動的バランスを体感する
図11. 重心始動による動的バランスの向上

足を前に踏み出して止まったときの安定性を比較していきましょう。

最初に通常の使い方で行っていきます。
まず片足を前に踏み出して前に沈み込んで止まります。
身体が沈み込んで止まってから揺れがなくなり安定するまでの時間が短いほど動的バランスがよいといえます。

では実際にやってみましょう。
まず足を踏み出して身体を沈めて止まります。
このときに少し身体が揺れると思います。

では次に重心始動でやってみましょう。
まず重心を意識します。重心を上下に操作して一番いい高さにセットします。
最後に重心から身体を動かしますが、沈み込んだときの重心の位置(空間の中で重心が止まる場所)を目指していきます。

図11の右側の画像で説明すると、腰の付近にあるオレンジ色の○から斜め下の○に向かって動いていき最後に重心をストップさせるイメージです。

最初に行った通常の使い方と比べると揺れる時間が短くなったのではないでしょうか。
これは重心を意識して重心から動かすことでお腹周りにある数多くの筋肉が使われやすくなるため通常よりも強い力を発揮することが出来るからです。

また、身体を動かす前に重心が移動するゴールを設定することで脳がバランスをとるための事前準備をしてくれます。
これはどういうことかというと、重心から動き始めることで足が勝手に適切な位置に接地します。

後ろから不意に身体を押された状況を想像してみてください。
考えなくても足は勝手にでてくれます。
これは脳が今までの運動経験から最適な位置を割り出して足を設置させるからです。

それ以外にも重心から動き始めることで衝撃に備えて事前に筋肉が活動しやすくなるので身体が安定しやすくなります。

重心始動でのメンタルの違いを体感する
図12. 重心始動によるメンタルへの影響

重心位置の違いがメンタルにどのように影響するのかを体感してみましょう。

図12に重心位置とメンタルの関係性を示しましたのでご覧ください。これを見ると重心位置によってメンタルが変化することがわかります。

では実際にやってみましょう。
図12の左側の表にある重心位置が高い・最適・低いときのメンタルの感じ方を確認していきます。

やり方は歩きながら姿勢を変えて感じかたを見ていきます。
最初に肩をあげてすくめた姿勢の状態で歩きます。
歩きながら途中で両肩の力を抜いて肩を下げてリラックスします。
また歩きながら下を向いてうなだれるような姿勢で歩きます。

このときに身体の感覚やメンタルの感じ方がどのように変化したかを確認してみてください。
どんな感じがしましたか。

いまいち分かりにくい場合は足裏の感覚に注意を払いながらもう一度歩きながら肩をあげる→肩をリラックス→うなだれるの順番で行ってみてください。

おそらく肩をあげたときは足裏の感覚がフワフワしたかと思います。
これは日本語で「あがる」「足が地に着かない」「浮足立つ」などと表現されます。

メカニズムとしては肩が上ることで身体の上の方が重くなり重心が高くなります。
重心が高くなると同じ体重でも足裏が軽く感じられます。

一般的に緊張すると肩に力が入りますので、足がしっくり決まらないなと感じるときは肩の力を抜いてリラックスすると重心が下がるためメンタルも安定しやすくなります。

元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜はバッターボックスに立ったときのルーティンで肩をリラックスさせるために一度上にあげてからストンと落としていました。とても理にかなったルーティンです。

次に行っていただいた両肩の力を抜くと落ち着いた感じに変化したと思います。
日本語で「地に足がつく」「平常心」「落ち着く」などと表現されます。
これは身体の重量分布が下に移動したため重心が下がって一番いい位置に着いたということです。

ちなみに平常心とは常に重心が乱れずに適切な位置にあることを意味します。
平常心は訓練することで身につけることができます。
通常びっくりすると重心が一気に上がりますが、お腹の中を意識して重心を操作することでびっくりしても重心が乱れない。若しくは重心の動きを最小限に留めることができるようになります。

以前、私がジェットコースターに乗った際に重心を一定の位置に保ったところ恐怖心がほとんどなく冷静に景色を見ることができました。
ジェットコースターで恐怖心が増すのは身体が急激に落下するため内臓が身体についてこれず一時的に身体内の上方に持ち上げられます。そうすると重心があがり不安定な状態になるため刺激に対してより怖いと感じるようになります。

最後のうなだれた姿勢では頭や肩が下に沈むために、重心が落ち着いた位置から更に下がり重苦しい感じになったかと思います。
日本語では「足取りが重い」「落ち込む」などと表現されます。

人間の脳はよく勘違いを起こします。
例えば口角を持ち上げた表情をすると脳は嬉しい楽しい状態だと認識して幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌量が増します。

これらのことから重心位置が変わると足裏の感覚が変わるため脳が勘違いを起こしてメンタルに影響を与えるのではないかと思われます。
私が行った実験においても重心位置が変わることで感じ方に変化が生じる結果が得られました。

また逆にメンタルが変わると重心位置もそれに応じて変化してしまう可能性があるので、スポーツでは常に最適な重心位置を保つことがメンタルを安定させることに繋がります。

よく武道などでは相手の心を読むといわれますが、これは相手の重心位置を感じ取り間接的に相手の心を推測するということを意味します。

スポーツ現場での導入方法

重心始動をスポーツ現場で導入する方法
図13

すでにスポーツをされている方が重心始動を取り入れる場合の手順としては、専門的な技術を身に付けた後に導入していきます。
その動作を無意識でやったときに形的に問題がなければ重心始動が導入可能となります。
理由としては、形が不十分な段階で重心始動を導入してしまうと形が崩れる可能性があるからです。

この重心始動は特別な器具などが必要ないのでどのようなスポーツにおいても取り入れることが可能です。

図13に野球の盗塁における導入例をあげたのでご説明します。
まず専門的な技術となる、開始姿勢・スプリントフォーム・ベースへの到達を習得します。
次に重心位置のセット・重心から動き出す・到達地点までの軌道など重心始動での使い方を身に付けます。
それらによって反応時間短縮・走り出しが早くなる・到達地点までの時間短縮されるため盗塁の成功率が高まることに繋がります。

是非、ご自身のスポーツで導入してみてください。
必ずあなたのスポーツパフォーマンス向上のお役に立てると思います。

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誰でも運動能力を高めるコツのまとめ

  • スポーツでは非日常的な運動能力が必要
  • 日常とスポーツでは身体的に要求されるものが違う
  • 日常動作をスポーツに適した使い方に変更することで、動きやすくけがしにくい状態をつくる
  • 野生の動物は重心から動いているトップアスリートに共通する使い方も重心から動いている
  • 重心始動のやり方
    ①重心だと思うところを意識
    ②お腹で重心を操作し最適な高さにする
    ③重心から動き始める
  • 重心始動を用いると様々な運動能力が一気向上する
  • 重心始動はどのようなスポーツにおいても導入可能

この記事を書いた人

パーソナルトレーナー齊藤登

トータルフィットネスサポート代表
齊藤 登

2004年に栃木県宇都宮市にて有限会社トータルフィットネスサポートを設立しパーソナルトレーニング、国民体育大会の帯同トレーナー、医療機関での運動指導、スポーツや医療系専門学校の講師、運動や健康づくりに関するセミナーの開催などを中心に活動している。

NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)ジャパン北関東地域ディレクターとして、日本におけるストレングス&コンディショニングの普及およびスポーツと健康に携わる専門職の育成にも力を入れている。

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