虹色の光がさしかかった手のひら

徒手抵抗とはその名の通り、素手で身体に負荷を加えることをいいます。

バーベルやダンベルなどの器具を全く必要としないため、レジスタンストレーニング(筋トレ)において非常に有効な手段の一つですがテクニックが不十分だと効果が半減してしまいます。

また不適切なやり方で実施すると筋肉や関節などに過剰な負荷をかけてしまいケガを誘発する恐れもあります。

今回は徒手抵抗での筋トレのやり方を宇都宮のパーソナルジムで20年以上の指導歴を持つプロのトレーナーがご紹介します。

 徒手抵抗を用いたレジスタンストレーニング(筋トレ)の特徴

  • フリーウエイトやマシンを利用したレジスタンストレーニングでは難しい複雑な動きにも抵抗をかけられる(動き全体に対して抵抗がかけることができる)。
  • 筋収縮形態を動作の途中で変化させることができる。
  • 抵抗の方向を調節することによりキネティックチェーン(運動連鎖)を引き出すことができる。
  • 往復運動や相反動作に負荷をかけることができる。
  • 器具を必要としない。

徒手抵抗を用いるときの手順

  1. 動きの確認(動きを誘導)
  2. 自動運動
  3. 抵抗運動(必要に応じて動作を修正する)

徒手抵抗の基本的なテクニック

(1)接触方法

対象者に触れる際、対象者を緊張させないようにすることが大切です。触れ方が強すぎたり弱すぎたりすると対象者に不安を抱かせ、緊張させてしまうことがあるので注意します。

接触方法は手掌面と指腹を使って圧が均等になるように触れ、爪を立てたり指先に力を入れすぎないようにします(写真1,2)。

徒手抵抗で爪を立て指先に力が入っている不適切なやり方
写真1. 爪を立てて指先に力が入っている悪い例
徒手抵抗で手の平全体で包み込むように触れている適切ななやり方
写真2. 手の平で包み込むように触れている良い例

(2)抵抗の加え方

適切な抵抗を加えることで、対象者の運動をスムーズに誘導することができます。

抵抗を加える際は、関節角度に応じて抵抗の方向を変化させ、運動軸に対して垂直にするようにします(写真3,4)。

徒手抵抗を加える方向が悪いために非効率的となっているやり方
写真3. 抵抗を加える方向が前腕に対して垂直ではない悪い例
徒手抵抗を加える方向が良いために効率的な運動となるやり方
写真4. 抵抗を加える方向が前腕に対して垂直な良い例

(3)実施者の姿勢

適切な抵抗を加えるためには、上肢の力だけではなく自分の体重を利用しながら実施するようにします。したがって、実施者の姿勢は常に一定ではなく必要に応じて変化させなければなりません。

ただし、完全に体重を乗せてしまうと、抵抗方向や抵抗量の微妙なコントロールが難しくなり、危険が生じるためいつでも抵抗を除去できる姿勢をとるようにします(写真5,6)。

徒手抵抗を加えながら姿勢を変化させるやり方(開始位置)
写真5. 相手の動作に合わせて姿勢を変化させる(開始)
徒手抵抗を加えながら姿勢を変化させるやり方(運動中)
写真6. 相手の動作に合わせて姿勢を変化させる(運動中)

(4)動作スピードと抵抗負荷

徒手抵抗を用いる場合、レジスタンストレーニングの目的に合った動作スピードや抵抗様式にて実施しなければなりません(表1)。

トレーニング目的動作スピード抵抗負荷
筋持久力/筋肥大ゆっくり可変抵抗を用いて筋に対する負荷を一定に保つ
筋力意識は速く
(高重量のためスピードはゆっくりになる)
可変抵抗を用いて筋に対する負荷を一定に保つ
パワー速くパワーを向上させたい関節角度に対して最適な負荷を与えた後、筋に対する負荷を徐々に減らす
切り換えし動作償却(移行)局面を速く伸張性局面いて急速な負荷を与えた後、抵抗を除去する
特異的動作特異的な動作スピード特異性を考慮した抵抗を加える
表1. トレーニングの目的に対する動作スピードと抵抗負荷

<表1の用語解説>
【可変抵抗】関節角度(張力-長さ関係)によって筋収縮の強さが変わるので、抵抗もそれに応じて変化させる

【償却局面】ストレッチショートニングサイクルにおける第二局面で、伸張性局面と短縮性局面(第三局面)の間の時間

【伸張性局面】ストレッチショートニングサイクルにおける第一局面で、筋の直列弾性要素に弾性エネルギーが蓄積され筋紡錘が刺激される

(5)口頭指示

対象者に対して抑揚のあるわかりやすい言葉で指示を与える(表2)。

発揮筋力声の抑揚言葉
強い力力強く大きな声をかけるもっと力を入れて!
弱い力やさしい口調で声をかけるゆっくりと滑らかに動かしましょう
表2. 力の強弱に応じて声のトーンを変化させる(例)

引用・参考文献

1)Thomas R.Baechle, Roger W.Earle. ストレングストレーニング&コンディショニング第3版. ブックハウスHD. 454. 2010.

2)阿部良仁, 岩間徹. パーソナルトレーナーズバイブル. スキージャーナル. 34-37. 2003.

3)有賀誠司. 競技スポーツ別ウエイトトレーニングマニュアル. 体育とスポーツ出版社. 28-54. 2007.

4)石井直方. 健康運動指導士養成講習会テキスト, 動的レジスタンストレーニング. 財団法人健康・体力づくり事業財団. 1030. 2007.

5)石川齊, 武富由雄ほか .理学療法技術ガイド第2版. 文光堂. 379-385. 2001.

6)覚張秀樹, 矢野雅知. 実践スポーツPNFコンディショニング. 大修館書店. 80-85. 1998.

7)覚張秀樹, 矢野雅知. スポーツPNFトレーニング. 大修館書店. 41-56. 1994.

8)川野哲英. ファンクショナルエクササイズ. ブックハウスHD. 49. 2004.

9)柳澤健, 乾公美. PNFマニュアル. 南江堂. 21-71. 2001.

この記事を書いた人

パーソナルトレーナー齊藤登

トータルフィットネスサポート代表
齊藤 登

2004年に栃木県宇都宮市にて有限会社トータルフィットネスサポートを設立しパーソナルトレーニング、国民体育大会の帯同トレーナー、医療機関での運動指導、スポーツや医療系専門学校の講師、運動や健康づくりに関するセミナーの開催などを中心に活動しています。

NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)ジャパン北関東地域ディレクターとして、日本におけるストレングス&コンディショニングの普及およびスポーツと健康に携わる専門職の育成にも力を入れています。

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