けがや痛みって本当に嫌ですよね。
こっちのけがが治ったと思ったら、他のところが痛み出したなんてことよくあるのではないでしょうか。
そこで今回はけがや痛みを予防するためのトレーニングについて宇都宮のパーソナルジムで20年以上の指導歴を持つプロのトレーナーが徹底解説します。
この記事を読んでけがや痛みから解放される生活を手に入れましょう。
- 1. けがについて
- 1.1. 外傷
- 1.2. 障害
- 2. けが・痛みの予防
- 2.1. けがの予防
- 2.2. 痛みの予防
- 3. 障害発生のメカニズム
- 3.1. 障害発生から炎症反応まで
- 3.1.1. ① 物理的な負荷が特定の組織に加わり続ける
- 3.1.2. ② 組織内にコラーゲン線維の断裂や延長などの微細損傷が生じる
- 3.1.3. ③ 白血球から炎症性のサイトカインが放出される
- 3.1.4. ④ サイトカインの作用によって血管透過性が高まる
- 3.1.5. ⑤ 損傷組織内に血漿成分が漏出し腫脹する
- 3.2. 炎症から修復まで
- 3.2.1. ① 炎症部位に組織を修復するための線維芽細胞が集まる
- 3.2.2. ② 損傷した組織を修復するためにコラーゲン線維が産生される
- 3.2.3. ③ 新生されたコラーゲン線維が無秩序に配列される
- 3.2.4. ④ 組織に応力が加わり続けることでその応力に沿わないコラーゲン線維が吸収される
- 3.2.5. ⑤ 最終的に最適な配列となり修復が完了する
- 4. 障害リスクの評価
- 4.1. FMS
- 4.2. ジョイント・バイ・ジョイントセオリー
- 4.3. 関節可動域と痛みによる分類
- 5. 障害を予防するためのトレーニング
- 5.1. ① コレクティブパターンを識別
- 5.2. ② 呼吸
- 5.3. ③ モビリティ
- 5.4. ④ 静的モーターコントロール能力
- 5.5. ⑤ 動的モーターコントロール能力
- 5.6. ⑥ 再評価
- 6. けがを予防しながら筋トレするやり方
- 6.1. 身体全体を使った筋トレの進め方の例
- 7. けがや痛みを予防したいという方はパーソナルトレーニングがおすすめ!
- 8. けが・痛みを予防する効果的なトレーニングのまとめ
- 9. 引用・参考文献
けがについて
けが(傷害)には種類があり大きく分けると外傷と障害になります。
外傷
外傷は突発的に外から大きな力が加わった際に生じるけがで、骨折、軟骨損傷、関節脱臼、じん帯損傷(捻挫)、腱断裂、肉離れなどがあります。
障害
障害は身体の特定部位に対して継続的にストレスが加わることによって起こるけがです。
慢性的な肩痛・腰痛・ひざ痛、テニス肘、シンスプリント、足底腱膜炎など様々なものがあります。
けが・痛みの予防
けがの予防
外傷と障害では予防対策が異なります。
外傷は突発的に起こるため予防するのは難しいのですが、スポーツをする方はウォームアップやクールダウン、日頃のコンディショニングをすることで外傷を軽減できる可能性があります。
詳しいやり方についてはスポーツ安全協会と日本体育協会が共同で作成した「スポーツ外傷・障害予防ガイドブック」をご覧ください。
障害は原因である繰り返し加わるストレスを減らしたり、身体の使い方を改善することで高い予防効果が狙えます。
このあと障害に対しての予防について詳しく解説していきたいと思います。
痛みの予防
痛みについてはまだ完全に解明されていないのですが、国際疼痛学会(IASP,2020年改定)が痛みの定義を次のようにしています。
「組織損傷が実際に起こった時あるいは起こりそうな時に付随する不快な感覚および情動体験、あるいはそれに似た不快な感覚および情動体験」
簡単に説明すると、外傷・障害が発生したときに起こる痛みと外傷・障害がなく心理的な痛みも存在するといっています。
したがって痛みを予防できるとしたら障害を予防することで、それに付随する痛みの発生を抑えることはできるかもしれません。
障害発生のメカニズム
障害発生から炎症反応まで
① 物理的な負荷が特定の組織に加わり続ける
骨や筋肉などにストレスが繰り返し加わります。
② 組織内にコラーゲン線維の断裂や延長などの微細損傷が生じる
コラーゲンが切れたり伸びたりして細かな損傷が起こります。
③ 白血球から炎症性のサイトカインが放出される
血液に含まれる白血球から炎症反応を促進する働きを持つサイトカインが放出されます。
④ サイトカインの作用によって血管透過性が高まる
正常な血管では水分や低分子物質は血管壁を通過しますが、タンパク質はほとんど通過しません。
血管透過性が高まるとタンパク質も透過する状態になります。
⑤ 損傷組織内に血漿成分が漏出し腫脹する
血液全体の55%程度を占める血漿成分が損傷した組織に溜まることで、患部が腫れあがります。
これらの一連の変化は炎症と呼ばれ、熱を持ったり、腫れたり、痛みが生じます。
炎症から修復まで
① 炎症部位に組織を修復するための線維芽細胞が集まる
炎症が起こっている部位にコラーゲンを作り出す線維芽細胞(せんいがさいぼう)が集まります。
② 損傷した組織を修復するためにコラーゲン線維が産生される
損傷した組織の材料となるコラーゲン線維が作り出されます。
③ 新生されたコラーゲン線維が無秩序に配列される
作り出されたコラーゲン線維がぐちゃぐちゃに結びついた状態で損傷部位につながります。
④ 組織に応力が加わり続けることでその応力に沿わないコラーゲン線維が吸収される
損傷した組織内に生じた外部への抵抗力によって不必要なコラーゲン線維が吸収されていきます。
⑤ 最終的に最適な配列となり修復が完了する
不必要なコラーゲン線維がなくなり最適な配列になることで修復が完了します。
損傷組織の修復過程では障害発生の原因となったストレスを減少する必要があるため、運動の制限や安静が求められます。
障害リスクの評価
FMS
障害発生の原因である繰り返し生じるストレスは不適切な動作によって起こる場合が多いので、まず動作パターンの検査を行い障害発生のリスクがあるのか評価をします。
評価にはFMS(ファンクショナルムーブメントスクリーン)という方法を用います。
FMSの詳しい説明についてはFMS Japanが公開しているFMS開発者のグレイ・クック氏による「動作スクリーニングは、明瞭さを提供する "Movement Screening Provides Clarity"」の動画をご覧ください。
FMSでは次の7つの動作パターンを行い評価していきます。
- ディープ・スクワット
- ハードル・ステップ
- インライン・ランジ
- ショルダー・モビリティリーチング
インピンジメント・クリアリングテスト(痛みを調べるテスト) - アフティブ・ストレートレッグレイズ
- トランクスタビリティ・プッシュアップ
プローンプレスアップ・クリアリングテスト(痛みを調べるテスト) - ロータリー・スタビリティ
ポステリオーロッキング・クリアリングテスト(痛みを調べるテスト)
ジョイント・バイ・ジョイントセオリー
ジョイント・バイ・ジョイントセオリーは、FMSで紹介した理学療法士のグレイ・クック氏とファンクショナルトレーニングの第一人者であるマイケル・ボイル氏によって考案された理論になります。
この理論では関節の役割を主に可動性が必要となるモビリティ関節と主に安定性が必要となるスタビリティ関節に分けて考えます(表1)。
関節 | 主な役割 |
---|---|
頚椎 | 安定性(スタビリティ) |
肩甲上腕関節 | 可動性(モビリティ) |
肩甲胸郭関節 | 安定性(スタビリティ) |
胸椎 | 可動性(モビリティ) |
腰椎 | 安定性(スタビリティ) |
股関節 | 可動性(モビリティ) |
ひざ関節 | 安定性(スタビリティ) |
足関節 | 可動性(モビリティ) |
足部 | 安定性(スタビリティ) |
モビリティ関節とスタビリティ関節は交互に存在し、お互いの役割を果たすことで正しく身体を動かすことができます(図1)。
逆に一つの関節の役割が不十分だと他の関節に悪い影響を与えてしまいます。
図2は股関節が固くなり可動性が低下したことによって腰や肩に痛みが生じる例になります。
関節可動域と痛みによる分類
- DP(ディスファンクション&ペイン):可動域制限あり/痛みあり
- FP(ファンクション&ペイン):可動域制限なし/痛みあり
- DN(ディスファンクション&ノンペイン):可動域制限あり/痛みなし
- FN(ファンクション&ノンペイン):可動域制限なし/痛みなし
一般的に痛みの部位(患部)と痛みを起こす原因(患部外)は別にあることが多くあります。
DNに対して可動域を高めるトレーニングを行い改善を図ることで、DPやFPによい影響を及ぼす可能性があります。
障害を予防するためのトレーニング
FMSでの評価、ショイント・バイ・ジョイント、関節可動域と痛みによる分類をもとに障害リスクが高いと判断した場合は予防のためのトレーニングを行っていきます。
障害予防のためのトレーニングの流れは次のようになります。
① コレクティブパターンを識別
不均衡や誤った動きのパターンを見極めます。
② 呼吸
呼吸運動を評価し必要に応じて改善するためのトレーニングをしていきます。
③ モビリティ
可動性を確保するためのトレーニングをしていきます。
④ 静的モーターコントロール能力
静的な動作の中で可動性と安定性が出せるようなトレーニングをしていきます。
⑤ 動的モーターコントロール能力
動的な動作の中で可動性と安定性が出せるようなトレーニングをしていきます。
⑥ 再評価
再評価をして障害リスクを確認していきます。
けがを予防しながら筋トレするやり方
筋トレ(レジスタンストレーニング)は筋力を高めるのに有効なトレーニング法ですが、特定の部位に負荷を加え続けると障害の原因になりうることがあります。
けがを予防しながら筋トレをするにはいくつかポイントがあります。
- 筋トレだけではなく前述した障害を予防するためのトレーニングも並行して行ってください。
- 筋トレの種目としては身体全体を使ったものを取り入れるようにしてください。
- 1つの関節だけを使用するアームカールなどの種目は特定の部位に負荷が集中しますので、セット数を制限したり定期的に種目変更などして障害リスクを高めないようにしましょう。
身体全体を使った筋トレの進め方の例
ステップ | 種目 | 内容 |
---|---|---|
① | 自体重ルーマニアン・デッドリフト | 体幹を安定させながら股関節を適切に動かしていきます。 |
② | ダンベル・ルーマニアン・デッドリフト | 上記の動作に負荷をかけていきます。 |
③ | ダンベル・ストレートアップ | 下半身で発生した力を体幹を通じて上半身に伝えていきます。 |
④ | ダンベル・スロー・ハングクリーン | 身体の内で発生した力を身体の外のダンベルへと伝えていきます。 |
⑤ | ダンベル・スロー・ハングクリーン | 爆発的に力を発揮して身体の内で発生した力を身体の外のダンベルへと伝えていきます。 |
筋トレについて詳しく知りたい方はの次の記事も併せてお読みください。
「筋トレする前に覚えよう!レジスタンストレーニングの基本テクニック」
「筋トレプログラムを作ってみよう!レジスタンストレーニングの原則」
「筋トレで健康になろう!レジスタンストレーニングが健康に及ぼす効果」
けがや痛みを予防したいという方はパーソナルトレーニングがおすすめ!
けが・痛みの予防についてご紹介してきましたが、「自分一人だけではちゃんとできるか不安」「全体の流れはわかったが実際にやるのは大変」と思われる方はパーソナルトレーニングがおすすめです。
パーソナルトレーニングなら最初にしっかりと測定をしてから自分に合ったトレーニングプログラムを作るので、効果的にけがや痛みを予防することができます。
パーソナルトレーニングではけがや痛みについて丁寧に説明しながらトレーニングを行っていきますので、身体だけではなく予防の考え方やけがに対する知識を学ぶことができます。
トータルフィットネスサポートでは、けがや痛みを予防するためのパーソナルトレーニングを実施しております。
パーソナルジムは宇都宮にありますが、遠方の方でもオンラインでサポートを受けられます。
ただいま無料体験キャンペーンも実施中です。ぜひこの機会にご利用くださいませ。
けが・痛みを予防する効果的なトレーニングのまとめ
- けがは外傷と障害に分けられます。
- 外傷は突発的に大きな力が加わった際に生じるけがで、障害は継続的にストレスが加わることによって起こるけがです。
- 外傷の予防は難しいのですが、スポーツ前のウォームアップやクールダウン、日頃のコンディショニングが有効です。
- 障害の予防は原因であるストレスを減らし身体の使い方を改善することが効果的です。
- 痛みの予防としては障害を予防することで、それに付随する痛みの発生を抑えることができるかもしれません。
- 障害は発生→炎症反応→修復の過程で完治します。
- FMS、ショイント・バイ・ジョイント、関節可動域と痛みによる分類をもとに障害リスクを見極めます。
- 障害リスクが高い場合は不適切な動作を改善するトレーニングを行っていきます。
- けがをしない筋トレのポイントは身体全体を使った種目を取り入れることです。
引用・参考文献
1)Gray Cook. ムーブメント ファンクショナルムーブメントシステム:動作のスクリーニング,アセスメント,修正ストラテジー. 有限会社ナップ. 2014.
2)金岡恒治. スポーツ傷害 予防と治療のための体幹モーターコントロール. 株式会社中外医学社. 2019.
この記事を書いた人
トータルフィットネスサポート代表
齊藤 登
2004年に栃木県宇都宮市にて有限会社トータルフィットネスサポートを設立しパーソナルトレーニング、国民体育大会の帯同トレーナー、医療機関での運動指導、スポーツや医療系専門学校の講師、運動や健康づくりに関するセミナーの開催などを中心に活動しています。
NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)ジャパン北関東地域ディレクターとして、日本におけるストレングス&コンディショニングの普及およびスポーツと健康に携わる専門職の育成にも力を入れています。
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